禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 櫻子はさらに追い打ちをかけるように、ほんの少し寂しげに笑った。
「雪乃は昔から叱られてばかりでしたのよ。周囲の男に色目ばかり使って気を引いてはトラブルを起こしてしまう不肖の妹ですわ」

 節子は阿吽の呼吸で娘の悪口に同調する。
「奉公に出ている身で、男に気を取られるなんて本当に恥ずかしい娘ですわ。真面目に仕事するよう厳しく躾けてくださいね」

 和臣は立ち上がりかけた。
 その動きに、武虎がちらりと息子を見る。

 和臣の目は怒りに燃えていた。
 声こそ発せないが、その眼差しは言葉以上に鋭い。

 櫻子は、その視線を正面から受け止めると、あたかも“怖がる女”のように肩をすくめ俯いた。
「ごめんなさい、和臣様。余計なことを申しました。でも⋯⋯私、本当に心配で。和臣様はお優しいから、卑しい女にも同情をかけてしまいそうで⋯⋯」

(卑しい女だと!?)
 和臣は雪乃を侮辱する言葉が和臣の理性を奪いそうになる。

 雪乃の胸がぎゅっと痛む。
 涙は落とさない。

 落としたら、櫻子の思うつぼ。

 雪乃は必死で俯いたまま、茶器を手に取って震える指を隠す。

 和臣の喉が、ごくり、と鳴った。