禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 武虎は和臣が声が出ない現象を心因的なものだと思っているようだった。

 医者に診せても治らないのは和臣自身が分かっている。
 でも、ほんの少しの期待で診察を受けた。

 その日、和臣の元には名だたる医師たちが訪れ、声の障害や身体の状態を丁寧に診断する。

 診察の間、和臣は一切言葉を発せず、ただ父の手の温もりと、医師たちの慎重な視線を感じる。
 武虎の静かな愛情が、和臣の心に深く染み入った。

 吹き抜ける冬の光が窓から差し込み、応接間の重厚な家具に柔らかく影を落とす。
 和臣は冷たい空気の中で、父の手のぬくもりを感じ、少しだけ安心して目を閉じる。

 和臣はこのまま、妖の影に侵されず、平穏な日々を取り戻せることを心の奥で強く願った。

 ♢♢♢

 小笠原家の嫡男ーー小笠原和臣が声を失った噂が流れてから一週間が経ったある日。

 玄関の方から、硬い足音が響く。
 女中が慌てた声を出す。

「あのっ、白川家のご当主様が!」

 雪乃がびくりと肩を震わせる。
 和臣の腕に力が入る。

 間もなく、白川当主——雪乃の父、白川倫太郎が妻の節子と娘の櫻子を連れてやって来た。