禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 喉が痛むほど叫びたいのに、何も発せない。

 雪乃が小さく微笑む。
「和臣様、ありがとうございます。喉の調子がお悪うございますか? 今、薬湯を淹れますね」
 その一言が、和臣の胸を強く締めつけた。

 和臣はゆっくりと首を振る。
(声を失っただけで、二度も雪乃を救うチャンスが貰えてるんだ。それで良いじゃないか)

 雪乃に殺された恐怖の記憶に押し潰されようとも、雪乃を救うことを和臣は再び誓った。

 応接間の重厚な扉が静かに閉まる。

 和臣は言葉を発することができず、微かに俯いたまま座っている。
 黒檀の机の上には、書き付け用の筆と紙が置かれていたが、彼はただ黙って手を握りしめるだけだ。

 武虎は静かに近づき、息子の肩に手を置く。

「声が出ないのだな」

 その言葉は低く、父としての優しさと、深い洞察に満ちていた。
 和臣は僅かに頷き、筆でその旨を紙に記す。

 武虎はその紙を受け取り、重々しく頷く。

「よし、分かった。できる限り沢山の医師に診せてみよう。お前は真面目過ぎるところがある。少し気を楽にしたら案外良くなるかもしれないぞ」