禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 このままでは雪乃は妖に喰われるどころか、父の妻として奪われ、自分は何ひとつ守れないまま前世で誓った想いすら裏切ることになる。

 救えない。
 間に合わない。
 声がない。
 伝えられない。

 和臣は声の出ない喉を押さえ、堪えようとして堪えきれず、ぽたりと涙を落とした。
 木製の古い板に落ちた涙は、小さな透明の円を作り、すぐに染み込んで消えた。

 それは雪乃が知らない。
 十七歳の少年の、そして前世で彼女を愛した恋人の、どうしようもない絶望の涙の意味を。

 雪乃は俯きながらも、そっと顔を上げた。
 その瞳は青と緑が混ざり合った不思議な色。

 光が差すたび宝石のように輝くその色こそが、彼女を長年苦しめてきた。
 「不義の子だ」「誰の血を引いたのか分からぬ」と囁かれ、陰で唾を吐かれ、家が傾くと奉公に出された。
 日本人ではあり得ない、珍しい瞳の色はすれ違う人々の顔も歪ませた。

 真っ黒な髪に、真っ黒な瞳。
 それ以外のものを持つ人間は何か訳あり。
 雪乃の毎日は物心ついた時から、蔑まれ、虐げられていた。

 なのに、今度は、その身までも売られようとしている。

 傾いた白川家をもう一度再建する道具として。