禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 その足音は、落ち葉を踏む音よりもずっと鋭い。

「まだそんなところ? ったくトロいねぇ。ほら、早くしな!」
 雪乃の背中を、佐和子が容赦なく押す。

 よろけた雪乃の膝が地面につき、細い指が砂に沈む。
「⋯⋯いたっ」

 小さな痛みの声が漏れた瞬間、和臣は縁側の陰に立ったまま、拳をきゅっと握りしめた。
 爪が皮膚に食い込み、痛みが走る。

 けれどその痛みすら、胸の奥の怒りを抑え込むには足りなかった。

(やめろ……)
 声は出せない。

 叫ぶこともできない。
 ただ胸の奥が煮えたぎるように熱い。

 佐和子は雪乃の腕を掴むと喚き散らす。
「ご奉公に来たくせに、泣き言なんぞ言わないんだよ」
 わざと耳元に息を吹きかけるほどの近さで雪乃を侮辱する。

「そんな顔してもダメだよ?  和臣様はね、あんたみたいなアバズレ、相手にしないんだよ」
 雪乃は言い返さない。

 ただ、砂に倒れた両手をぎゅっと握りしめる。
 それでも頭を下げて、震える声で答える。

「申し訳ございません」
 その声は、秋風に吹かれて今にも消えそうだった。
 和臣の胸の奥が、ぎゅう、と締めつけられる。