禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 しかし、自我を失ったかのように化け物と化し、自分を死の世界へ誘った彼女の姿が忘れられない。
(何の為に⋯⋯一体、俺は何のために⋯⋯)

 和臣の拳は震え、胸の奥に込み上げる焦燥が熱を帯びていく。
 雪乃は、琴音の枕元に一度だけ振り返り、ほんの一瞬、傍観する和臣の方へ寂しげな目を向けた。
 その目が、「助けて」と言っているように見えた。

 佐和子はやっと和臣の存在に気づいたのか、軽く会釈すると雪乃を再び鬼のような形相で睨んだ。

 ♢♢♢

 廊下に出されると、朝の冷たい風が襟元を撫でた。

 雪乃は徹夜明けの身体を引きずるように立ち上がり、佐和子の荒い呼吸と怒声が背に迫る。

「早くしな! 庭の落ち葉掃除なんて山ほどあるんだからね!」
 髪を引っ張られ、肩がよろける。
 痛みに視界がにじむ。

 雪乃の視線は遠くから見つめてくる和臣を離さない。
(話したい。和臣様と⋯⋯)
 自分でもよくわからない感情が胸の奥でざわついている。

 会ったばかりなのに、初めてではないような気がする。