禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 落ち葉を踏む足音、秋の風に混ざる佐和子の冷たい声。

 雪乃を救いたいのに救えない、和臣の胸は、今、切なさと苛立ちで締め付けられていた。

 その夜、和臣はうなされるように過去の悪夢を見た。

 冬の霧が濃く立ち込める街外れで大妖に襲われた。

 大妖——鬼のような角と狐のような尻尾を持つ得体の知れない存在。

 雪乃の青緑の瞳が闇に光を放ち氷のような蒼に変わる。
 彼女の手先から舞い上がる氷の結晶が周囲の木々を白く染める。
 雪女として覚醒した雪乃の姿は、美しさと力に満ちていた。

 だが和臣は、雪乃の正体を知ったばかりだった。
 雪乃は妖に狙われ続けていた。
 和臣は雪乃が若く美しいせいだと思っていたが、実際の理由は別だった。

 雪乃は雪女の血を引いていたのだ。

 妖が和臣に危害を及ぼそうとした時、彼女は雪女に変貌し彼を守った。
 その時の雪乃は優しい人としての心を持ったまま雪女の力を使っていた。

 雪女——人を喰らう存在。

 彼女の正体を知った瞬間、胸に冷たい衝撃が走った。
 しかし、和臣の目には恐怖よりも強く、揺るぎない想いが宿っていた。