禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

雪乃の笑顔に愛の告白の返事を求めたあの瞬間。
 胸が張り裂けそうになるほど、心を曝け出した自分を、今もはっきりと覚えていた。

 だが、その記憶が蘇るたび、心に重くのしかかるものがある。
 声を失ったこと、雪乃を守れなかった過去。

 そしてあの雪女として覚醒した彼女に手をかけられた記憶。

 和臣の足は無意識に一歩、後ろへと引かれる。

 呼吸が少し荒くなる。
 胸の奥で、知らず知らず恐怖と後悔が絡み合い、心を縛り付ける。

(もう、近づいてはいけない。雪乃は雪女だと分かってたじゃないか)

 雪女は若い男を誑かし養分にする恐ろしい妖だ。
 そんなことは分かっていたが、雪乃が雪女だと分かっても自分は彼女と心を通わせていると信じていた。

 雪乃は微笑みを浮かべ、そっと和臣に挨拶する。

「和臣様でいらっしゃいますね。本日より小笠原家にご奉公に参りました白川雪乃と申します。宜しくお願いします」
 その声は柔らかく、穏やかで、秋の光に似ている。

 だが和臣は、視線をそらし、石畳の端に目を落とす。

 心の奥底で叫ぶ声はあるのに、口は固く閉ざされたまま。