禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「和臣。また聞き耳を立てているのか」

武虎は、冬の刃のような声音で吐き捨てた。

冷気のような威圧が廊下に満ち、空気がかすかに震える。
和臣はゆっくりと、雪乃の方を見た。

唇が何度も形をつくるが、声にならない。
(言えない。やめろ、とも。奪うな、とも。彼女の前で、何ひとつ)

胸が裂けるようだった。
かつて愛し、共に笑った女。
彼女を守りたいという一途な思いから声まで失った。

自分の全てを賭けたと言っても過言でもない女が、今この世界では「父の妻」になろうとしている。

障子越しの淡い光が雪乃の頬に落ち、震える長い睫毛を淡く照らす。

雪乃が、自分の母になる。
その残酷な現実が喉を締めつけ、和臣の息を奪う。

廊下の奥、庭園の松が風でざわめき、白い石灯籠の影が滲んで揺れた。
和臣の視界もまた、痛みによって歪んでいく。
声を失った喉がうずいた。

未来を変える代償として差し出した声。
その沈黙を、今ほど悔しく重く感じたことはない。

雪乃は和臣の絶望を理解しきれずとも、その苦しみの奔流だけは敏感に感じ取った。
胸の奥がざわりと乱れ、細い肩が小刻みに揺れる。

「和臣様?」