禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

自我を失った雪女の瞳は、氷の底に閉じ込められた光のように無機質で、かつて和臣が愛した優しい少女の面影はなかった。

凍りつく直前まで、和臣は彼女の頬に触れようとしていた。
声のない喉が震え、呼びかけたかった名も氷の中に閉じ込められる。


「和臣様?」
雪乃の銀髪が徐々に元の色を取り戻す頃、彼女はようやく自分がしてしまった事に気が付く。

和臣の手を握ると、感じるはずの温もりは、もう冷たく、硬く、氷と化していた。
胸の奥で、激しい自己嫌悪が炸裂する。

雪乃は凍った和臣を抱きしめたまま、まるで宝物のように腕に抱え静かに涙する。

荒れ狂う吹雪の中、雪乃は立ちすくみ、再び絶望し髪を銀髪に染める。
氷の刃を自ら作り、自らの胸を貫くのだった。

♢♢♢

和臣はゆっくりと目を開けた。

天井から察するに和臣の自室だ。
(禁忌の妖術は死んだら、またこの時に戻るのか?)

窓から見た風景は落ち葉の舞う秋の終わり。
十六歳になったばかりの雪乃が奉公に来た日だ。

脳裏に、断片的な記憶が、残酷なほどに鮮明に甦る。

あの日、あの時、吹雪の中で銀髪の雪女が目を光らせ、氷の刃を生み、全身を覆った。