禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 柔らかく言いながらも、その瞳は獲物を追う狐のように鋭い。

「貴女、武虎様と結婚したくないんでしょ?」
 雪乃は唇を震わせる。

 その問いは、心の奥を突かれたようで息が詰まった。

 雪乃は無意識に頷いていた。
 武虎を頼りにした事もあったが、雪乃の心には和臣がいる。
 まるでずっと昔から自分の心は和臣に捧げていたようにさえ感じていた。

 櫻子は雪乃の手を取り、まるで幼い子をあやす姉のように優しく握る。
「私が逃げ出す手助けをしてあげる」

 その言葉は、甘くて柔らかく、けれど底に沈む黒い影が雪乃の心をざわりと揺らした。
(お姉様が助けに来てくれた? 本当に? あの冷たいお姉さまが?)

 疑いながらも、胸の中に小さな希望が灯る。

 だが、希望は不安と混じり合い、落ち着きなく揺れていた。
 櫻子の微笑みは眩しいほど優しいのに瞳の奥で何かが光り、その光がどうしようもなく怖かった。

 それでも雪乃は櫻子を信じたかった。

 ずっと欲しくて、ずっと諦めていた「姉の優しさ」が、今目の前に差し出されているのだから。

 雪乃は小さく頷いた。
「お願いします。お姉様」