禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「嫁としての覚悟についてお話ししてきたわ。立派なお家の奥方として、どれほど尽くせるか“妹を教育して差し上げます”と伝えたら、すぐ通してくださったの」
 雪乃は息を呑み、胸に白い痛みが走る。

 その瞬間。

 櫻子がすっと歩み寄り、雪乃をぎゅっと抱きしめた。
 驚きで、体が固まった。

 雪乃は今まで、櫻子に抱きしめられたことなど一度もない。
 幼い頃に泣いても、怯えても、彼女は手を伸ばしてはくれなかった。
 それどころか、節子と一緒に雪乃を蹴り飛ばした。

 胸の奥がひどくざわつき、鼓動がうるさく響いた。
「あ、あの⋯⋯お姉様?」

 櫻子の腕は細いのに、逃げられないほど強い。
 雪乃の肩を抱き寄せながら、耳元でふっと笑った。

 そして次の瞬間、その声は先ほどまでの優雅な響きとはまるで違っていた。

「⋯⋯可哀想な雪乃。こんな可哀想な子は滅多にいないわ」

 雪乃の背筋に冷気が走る。
 櫻子は雪乃を離し、今度は軽やかな笑みを浮かべる。

 その表情は、姉妹の情を演じながら、どこか楽しげですらあった。

「助けに来たのよ。雪乃」