禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

雪乃は心臓を掴まれたように固まった。
 櫻子は、薄い笑みを浮かべながら部屋に一歩足を踏み入れる。

 冬の外気をまとって、その姿だけが眩しく見えるほど整っている。
 しかし、その微笑みの奥に潜む冷たさが、部屋の空気をいっそう凍らせた。
「お、お姉様?」

 声が震えた。

 櫻子は部屋を見回し、可哀想な妹を心配で見に来た姉の顔をつくる。
 けれど瞳は氷のように澄んでいて、温かさの欠片もなかった。

「雪乃。貴女のことが心配で来たのよ。ああ、こんなに暗くて寒い場所に閉じ込められて、可哀想に」

 その言葉とは裏腹に、櫻子の足取りは軽く、まるでこの状況そのものを楽しんでいるようにすら見えた。

 雪乃は身を縮め、櫻子の次の言葉を待った。
 櫻子は腰を下ろし、袖を整えながら言う。

「さきほどね、小笠原家のご当主、武虎様にご挨拶してきたの」
 その一言で、雪乃の胸はぎゅっと縮んだ。

 櫻子の声は柔らかいのに、そこに宿る響きは氷の刃のように冷たい。
 櫻子の唇が、ゆっくりと艶やかに弧を描いた。

 その微笑みは、まるで雪乃の動揺を楽しんでいるかのような、美しく作られた仮面。