禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 声はかすれ、扉に吸い込まれるだけで誰にも届かない。

 それでも、雪乃は信じた。

 扉越しに確かに感じた気配はほかの誰でもなく、和臣だったと。

 翌朝。

 薄曇りの空の光が障子を透かして白く差し込んでくる。

 眠れぬまま迎えた朝は、いつもよりずっと寒く感じられた。
 部屋は相変わらず静かで、外の世界から切り離されているようだった。

 畳は冷たく湿り、吐く息はかすかに白い。

 そのとき——がらり。

 重たい木の扉が開く音がした。
 雪乃は胸が跳ね、思わず顔を上げた。

 和臣だ、と一瞬胸が熱くなる。
 しかしそこに立っていたのは、淡い桃色の羽織をまとい髪をゆるく結い上げた、櫻子だった。