禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪は静かに降り続き、離れの小さな部屋は、まるで雪洞の中に閉じ込められたかのように冷え切っていた。
 雪乃は薄い布団の上に膝を抱え、天井を見つめていた。

 寒さで頬が痺れ、指先は氷のように冷たい。
 それでも眠れない。

(和臣様⋯⋯)

 呼べば来てくれそうな気がして、でも来ないことが怖くて、声にはできなかった。
 その時だった。

 ——ぎ、と廊下の板が軋む。
 微かな音。

 けれど、この静まり返った離れでは、誰かが立つだけで空気が震えるように感じる。
 雪乃は目を瞬き、小さく息を呑んだ。
(誰?)

 扉の向こうに、気配があった。

 足音は殺されているのに、なぜか“いる”と分かる。
 人のあたたかさと、何か焦燥のようなものを滲ませた気配。

 胸が高鳴る。
(和臣様?)

 思わず立ち上がり、扉へと歩み寄る。
 足元の畳が冷たく、冷やされた空気が皮膚の下にまで浸み込む感覚。

「誰かいらっしゃるのですか? 閉じ込められているんです。助けてください」

 その小さな囁きは扉の向こう側には届かない。
 けれど扉に手を添えると、向こう側にも同じように誰かが触れた気がした。