禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 頑丈な体躯が、細い廊下をふさぐ。
 和臣は眉を寄せ、男をにらみつける。

 言葉はなくても、意思は十分に伝わったはずだ。

「旦那様のご命令です。誰も、雪乃様にお会いしてはいけないと」
 和臣の胸の奥で怒りがはじけるように燃え上がる。

 喉の奥が震える。

 声を失っていることが、この瞬間ほど悔しく思えたことはなかった。
 雪乃の不安を考えるだけで気が狂いそうになる。

 拳を握りしめ、扉に手をかけようとすると、男が両手で和臣の肩を押さえつけた。

「いけません、和臣様!」
 和臣は男の腕を振り払おうともがいた。

 しかし、声が出ない。

 抗議の言葉も、怒りも、胸の奥で渦巻くだけ。
 歯を食いしばり、肩を震わせる。

 扉の向こう寒い部屋に閉じ込められた雪乃が、どんな思いでいるかを考えた瞬間。
 胸が張り裂けそうになった。

 和臣は押さえつけられながらも、扉の向こうに向かい、無言で、ただ必死に雪乃の名を呼ぼうとした。
 声にならない呼び声が、寒い廊下に震えながら消えていく。

 扉の向こうで、雪乃がその声を待っているとは知らずに。

 ♢♢♢

 夜更け。