禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 夜半を過ぎた頃に季節外れの雪が降り始める。

 小笠原家の離れの一室は、障子の隙間から入り込む白い光だけが頼りで、まるで外界と切り離された箱のように静まり返っていた。
 雪乃は両手を膝に置き、小さく震える息を吐いた。

 部屋に閉じ込められて三日。
 女中を呼んでも扉の向こうから短い「申し訳ございません」という返事が返るだけで、外へ出ることも許されない。
 襖の外に立つ番の足音、窓枠に新しく打ち込まれた釘、鍵のかかる金属音。

 全てが、雪乃から自由を奪っていった。
 胸の奥で、嫌な予感がじわりと広がる。

 「和臣様⋯⋯」
 声に出した瞬間、胸がきゅうと縮んだ。

 あの人の静かな瞳、手の温もり、店の軒先で渡された手紙。
 あの優しさが恋しくて、思い出すたびに切なくて息が苦しくなる。

 (私、どうしてこんなに和臣様の事を?)
 雪乃はそっと懐に手を入れた。

 和臣からもらった手紙を握り締めると、指先がかすかに震えていた。

 『妖の気配が近い。君が狙われている。どうか、一人にならないで欲しい』

 その言葉が、今はまるで別の意味を持つように胸に刺さる。