禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

(雪乃は奉公人なんだから古い着物でも着て、家で雑巾掛けでもしてなさいよ!)

 和臣は黙って櫻子の言葉を聞く。その無言が、櫻子の心に小さな勝利感をもたらした。

「心配して差し上げただけですわ、和臣様」
 そう微笑む櫻子の目には、もう嫉妬だけでなく、手に入れたいという強い決意が宿っていた。

♢♢♢

 櫻子は重い息を吐きながら白川家の応接間に立っていた。桜色のコートの裾が床にわずかに擦れる。
父、白川倫太郎の席に向かい、決意の表情で声を上げる。

「お父様、私、小笠原和臣様と結婚したいのです」

 倫太郎は眉をひそめ、書類に視線を落としたまま静かに言う。

「櫻子、お前の希望は分かるが少し遅かったな。既に和臣の父である小笠原武虎と雪乃の縁談が決まっている」
 櫻子の頬が紅く染まった。

 怒り、嫉妬、屈辱ーー混ざり合う感情が胸を締め付ける。

 親子ほど歳が離れた男に雪乃が嫁ぐのはいい気味だが、相手が悪い。
 小笠原家の莫大な財産を雪乃が好きにできるようになるのは許せない。

「そんなこと、許せるはずがありませんわ。武虎様はこの間、奥様を亡くされたばかりではないですか」