禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

(奉公人の分際で、私ってばなんてことを!)

 慌てて無礼を謝罪したが、既にお汁粉が注文された後だった。

 店先に腰掛け、熱いお汁粉を前にすると、湯気が顔にあたり頬が柔らかく温まった。
 ひと口すすると、甘さの奥にかすかに塩気があり、舌に雪が溶けるような優しさが広がる。

 和臣は、そんな雪乃の表情をじっと見つめていた。
「そんなに、私の食べる顔が気になりますか?」
思わず雪乃が問いかけたのは照れ隠しだ。

(どうして、和臣様は愛おしくて堪らないみたいな目で私を見るの?)

 和臣は、ほんの少しだけ目を細め、首を横に振った。
 その目の色が、胸に痛いほど優しくて、雪乃は思わず視線を逸らす。

 思い出せない記憶の気配が、地面に落ちる桜の花びらのように静かに降り積もる。
 甘味処を出たあと、和臣は呉服屋の軒先に立ち止まった。
 暖簾がはためき、店先には淡い桃色の羽織や、落ち着いた藤色の半衿が並べられている。

 雪乃は羽織を彼女に合わせはじめた和臣を見て慌てる。
 和臣の見立ててくれている服は高価なものばかり。
奉公人の雪乃が主人である和臣に買って貰って良いものではない。