和臣の手が雪乃の手を優しく包む。
「どちらへ行かれるのですか?」
雪乃の問いかけに和臣は何も言わず、ただ優しく手を引いて歩き出した。
商店街に続く道は、薄日が淡く照らし、店々の木の看板が白く光っている。
道行く人々の羽織の色、香ばしい煎餅の匂い、茶葉を焙じる香り、湯気の立つ甘味処。
そのどれもが懐かしく思えた。
(⋯⋯あれ? 私は、和臣さまに、この道を引かれたことがある?)
胸の奥が、ふわりと温かく、切なく疼く。
商店街に入ると、人々のざわめきと、小さな笑い声が音の波のように押し寄せた。
無言のまま歩く和臣の背に「安心して」と書かれているようで、雪乃はただその手を握ることしかできなかった。
甘味屋の前で足が止まる。
飴細工がくるりと飴色に光り、湯気のたつ蜜の匂いに包まれ雪乃はソワソワし出した。
和臣は少しだけ首を傾け、雪乃の顔をうかがった。
その仕草を見た瞬間、胸の奥が強く跳ねた。
——知っている。
——この人は、私が甘いものに目がないことを知っている。
「いただきたい⋯⋯です」
雪乃は気がつけばおねだりしていて自分でも驚いていた。
