禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

(心で伝えて見せる。それだけの気持ちを持って俺は時を遡ったんだ)

 和臣の変化に周りが目を見張るのが分かる。
手元を覗き込んでくる同級生たちが鬱陶しく、和臣はそっと別の紙を上に置いた。
 そこに無言で思いつく限りの戦術図を次々と提示する。

 群がってくる同級生たちに渡してやると目を輝かせて紙を受け取った。

「す、すげえ。流石、小笠原家の嫡男だ」
 蔑むような視線が羨望の視線に変わる。

 無言でも、圧倒的な才覚が空間を支配していく。
「⋯⋯!」
 同級生たちは息を飲み、表情を変えた。

 笑い声は消え、代わりに尊敬と、少しの畏怖が交錯する。
(そうだ。俺は、言葉がなくても優秀だ。卑屈になる必要なんてない!)

 午前の演習も終わったところで、待ち人が現る。
 腰までのまっすぐな黒髪に印象的な青緑の瞳。
 滅多に見られない人目を引く美しい女。

(雪乃⋯⋯)
 和臣は目が合うなり、小走りに駆け寄ってくる女を見て心から守りたいと願った。