禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 けれど今は――ただの“声のない青年”として、軽んじられる。
 惨めで、悔しかった。

「可哀想だろ。喋れないんだから、返してやれよ渾身の恋文なんだから」
 少し馬鹿にしたような同級生の声。
 同情の言葉を屈辱と感じるのは自分のプライドがまだ死んでないからだ。

 屈辱の中で、和臣はふと気づいた。

(変わったのは、声じゃない。卑屈になった自分だ)
手が震えた。
 回帰前の自分は自信に溢れていた。
 奉公に来た雪乃を見るなり、「俺と付き合え」と命令のような告白をした。

 断られる可能性など少しも考えなかった。
 傲慢なくらいの自信があった。

 その自信は自分の生まれだけでなく身につけてきたものから溢れ出たもの。
(それは声を失っただけでなくなるものではなかったはずだ!)

 スッと立ち上がり、放り投げられた和紙をを佐藤の目前でビリビリに破く。
 床に散った紙を拾えとばかりに睨みつけると、佐藤敏夫は慌てたようにはいつくばった。

 和臣は机に手を置き、静かに、しかし確実に姿勢を正した。

 新しい和紙を用意し、再び雪乃への手紙を書く。
告白ではない。今、起こっている危険を書き綴る。