禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 一年後、妖の生贄として命を奪われる運命にあることを。

 和臣は知っていた。
 だからこそ、天狗を頼り禁忌の妖術を使い時を遡った。

 過去に戻り、雪乃を救うために。

 だが代償として、言葉をを失った。
 声を発せない身体に変えられ、それでも彼は構わなかった。

 雪乃の命さえ助かるなら。
 それでも、自信がない。
 言葉一つ話せぬ男を眼前の美しい女がどう思っているのか。
 過去のように「俺と付き合え」などと不躾にも思える告白をした自分が本当にいたのかさえ疑わしい。

 だが、雪乃は、そんな真実を知らずに微笑み、そっと和臣の手を取った。

「和臣様、手が冷たい。春だと言っても、外はまだ寒いのですね」

 和臣の指がかすかに震える。
 雪乃の温かい手が触れた瞬間、胸が痛むほど懐かしい。
 心の底で何度も、何度も求めた温度だった。

 恋仲になり、愛を語り合い、笑い合った記憶が蘇る。

 その時、温室の奥からふっと影が揺れた。

 近い場所で、黒い煙のようなものが瞬き、狐のような耳をした影が姿を現しては消える。
 雪乃は気づかなかったが、和臣には見えていた。

――あれは、雪乃の命を喰らう大妖の使い魔の妖狐だ。