禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 声が出せない喉を押さえ、必死に “違う” と伝えようとする。
(雪乃⋯⋯全部、罠だ⋯⋯)
 何度口を開いても、漏れるのは空気の震えだけ。

 和臣は胸を抉られたような痛みを覚える。
「和臣様。本日は士官学校にお弁当を届けに行っても宜しいですか? 実は寝坊してしまい未だお弁当が出来てないのです」

 雪乃が照れたように言った言葉に和臣は息を呑む。

「寝坊か⋯⋯可愛いな」
 武虎は真面目な雪乃が寝坊したと言っている事に笑っているが、そんな事は有り得ない。
 雪乃は前日から弁当の仕込みをしていて、朝炊き上げた米を詰めるだけの状態にしている。

 そんな雪乃のルーティーンを知っているだけに、彼女の言動には違和感しかない。

(もしかして、雪乃は何かに気付いてくれたんじゃ)
和臣は彼女の言葉に了承するように深く頷いた。

ーー雪乃はそういう女だった。

 一目惚れで告白し恋仲になったが、知れば知るほど好きになった。

 雪乃ほど、思いやりに溢れ繊細な気配りをする女を和臣は知らない。

 いつものように士官学校に行く。
 教室に入り、席に着くといつものように好奇の目にさらされる。