禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃は祈るように見つめていた。
 その海のような青緑色の澄んだ瞳が本当に好きだった。

「和臣様の言葉をください」
 その一言が、和臣の心を深く揺さぶる。

 夜風が二人の間を通り抜ける。
 静けさの中、筆がようやく紙に触れ文字だけ、震えるように記された。
『⋯⋯ゆ』
 雪乃はそれをじっと見つめ、その字を愛おしそうに撫でた。

 和臣は唇を強く噛んだ。
 雪乃”のゆ”。

 それ以上書けなかった。

 雪乃はその一文字を見つめながら、小さく微笑んだ。
「ありがとうございます。その一文字で、十分です」
 そう言って、雪乃は胸に紙を抱いた。
 
 和臣は言葉も出せず、ただ涙をこらえることしかできなかった。

♢♢♢

 翌朝、武虎が朝食の場に雪乃を呼ぶ。
 普段、配膳する立場の雪乃は女中たちに睨まれながらも食卓についた。

 雪乃は恐縮しながらも湯呑を両手で包み、ほっとしたように息をつく。
「旦那様、昨晩の晩餐会は大変ご迷惑を掛けました」

「初めての経験だろう。少しずつ慣れていけば良い。私が支えるから」
 武虎の言葉に恥ずかしそうに微笑む彼女を、和臣はただ見つめるしかなかった。