禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

月明かりで暗くて書けないと勘違いした雪乃は灯籠を側まで持ってきた。

和臣の肩が震える。
しばらく沈黙が流れた。
「恐れ多いお願いだとわかっています。でも、和臣様のお心を、知りたいのです」

和臣の指先がわずかに揺れた。
雪乃の知りたいという言葉に、どれだけ胸が締め付けられたか彼女は気づいていない。

今は過去のように恋人同士でもない。
ーー言葉も発せぬ小笠原家のお荷物。

和臣は万年筆を受け取るが、手が震え、うまく掴めない。
(妖狐の妖術か!)
屋敷全体が妖狐の監視下にあるようだ。

真実を雪乃に伝えさせまいとしているのだろう。
万年筆が畳に落ち、小さく転がった。

雪乃は驚き、手を伸ばす。
「大丈夫ですか? どこか痛いのですか?」

首を横に振る和臣。
けれどーー伝えたいのに伝えられない。

その苦しみがあまりにも深くて、胸が締め付けられているだけだった。
雪乃はそっと万年筆を拾い上げ、和臣の掌に包むように戻した。
「ゆっくりでいいのです。少しでも書いてくださったら⋯⋯それで」

和臣は長く息を吐き、
震える手で筆を紙へ近づけた。
けれど、書こうとした瞬間に筆先が宙で止まる。