禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 そう思いながらも、和臣は期待に胸を膨らます。

 和臣は必死に書き物をする仕草をした。

「はい。今、用意しますね」
 和臣は何故今まで言葉が話せないと諦めていたのかと反省する。
 仕草だけで、雪乃は自分の意図を分かってくれた。
和紙に書いて筆談すれば良い。

 声が出せなくても、音を使わなくでも文字で想いは伝えられる。
 意気揚々と万年筆を手に取ったその時だった。
(手が動かない? 字が書けない⋯⋯だと?)
 万年筆を握る指先に、まるで薄い膜が張りついたような違和感が走った。
 握っているはずなのに力が入らない。指が、腕が、自分のものではないように言うことをきかない。

(どういうことだ?)

 墨の匂いが微かに漂う静かな部屋の中で、和臣の呼吸だけが不自然に荒くなる。
 雪乃が不思議そうに首をかしげ、そっと和臣の手元を覗き込んだ。
「和臣様?」
 呼びかけは柔らかい。けれど、その声音には小さな不安が混じっていた。

 和臣は必死に指を動かそうとするが、万年筆は指の間から滑り落ち、ころりと畳の上を転がった。
(書けない? どうして今に限って⋯⋯)