禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜


 ふと合った目は既に欲に溺れ自分のかつて尊敬した父のものではなかった。
 和臣はとにかく雪乃に危機を知らせようと彼女の部屋に急いだ。

 雪乃の部屋の前まで行って、こんな夜更けに訪ねるのは不躾だと思い返す。

「和臣様?」
 障子越しに聞こえてくる雪乃の声。
 和臣は思わず障子を開けた。

「いかがなさいましたか? 喉が渇いたのなら今、お水を」
 布団の上に座って書物を読んでいた雪乃が立ちあがろうとする。
 和臣はそんな彼女を止めようと慌てて近寄り、着物の裾を踏んでしまう。

「か、和臣様?」
 雪乃が戸惑った声をあげる。

 気がつけば、彼女の上に倒れ込んでいた。
 息が触れ合うほどの距離に戸惑いながら和臣が彼女から離れようとした時だった。

「前にもこんな事があったような気が⋯⋯」
 雪乃の呟きに和臣の心臓が早くなる。
 遠い過去、彼女と恋人同士だった時に触れ合いそうな距離になった。

 婚前前にも関わらず、魅力的な彼女に何度手を出しそうになったか分からない。
 雪乃は時に無邪気で、時に百戦錬磨の女のように魅惑的な不思議な女だった。

 時を遡る前の記憶を雪乃が覚えている訳がない。