禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

武虎は、しばらく和臣を無表情のまま見下ろしていた。
扇子の先がゆらりと揺れ、金の房飾りがかすかに鳴る。
そしてーー彼はふっと、微かに口角を上げた。
冷たい、しかし計算しつくされた笑みだった。

「和臣、お前、雪乃に惚れてるな?」
和臣は驚きに目を見開く。
それと同時に息子の自分が惚れた女には手を出さないのではないかという期待を抱く。

だが、直ぐに和臣は、氷水を浴びせられたように背筋が寒くなった。
父の表情に、慈悲など含まれていない。

武虎は扇子を閉じ、静かに歩み寄る。
その足取りは、静寂を引き裂くように重く響いた。
「十六の小娘の心など、いかようにも傾くものだ。私が味わい尽くしたら、お前にも分けてやっても良いぞ」
幼い頃から父の計略を見て育ち、勝つためにどれほど残酷な手段を選ぶ男か知っている。
それでも、このような下世話な話を得意げにするような男ではなかった。

(何かが父の精神に影響力を及ぼしている、妖狐はそんな事もできるのか)

妖狐は大妖に比べれば、使い魔のような下っ端。
回帰前、あっさりと雪乃に倒された存在だ。