禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

和臣は怒りで頭が沸騰しそうになりながらも深呼吸して心を落ち着かせた。
(何かがおかしい。そもそも父はこんな男だったか?)

回帰前、自分と雪乃が恋人同士だった時は父は雪乃を性的な目で見てはなかった。

没落貴族の白川家から奉公に来た娘。
結婚において得る利益はなくても、恋仲になったと報告すると働き者の良い娘を選んだと喜んでくれた。

父は良識があり、頭が切れ、息子の自分の幸せを願ってくれる理想の父親だった。

今の父は別人のようだ。
尊敬していた男が欲に溺れた薄汚い存在のように感じる。

(妖狐の妖術に惑わされてるのか?)

部屋の中を障子の隙間からそっと覗き見る。
和臣は息を呑む。

武虎が、誰かーーいや、何かと対面していた。

それは人の形をしていたが、輪郭が揺らぎ、長い袖からは黒い霧がこぼれその足元には獣の形をした影が蠢いている。
九つの尻尾の影がその獣の正体を現していた。