禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 「そうだな。素直になっても良いかもな。命を失っても守りたいくらい――お前を愛している。小春」

 今度は、誤魔化さなかった。
 翠人の声は低く、しかしどこか柔らかく響いた。

 言葉が落ちた瞬間、時間が止まったようだった。


 かつて、声を失い命を捧げるように妖を愛した男を見て愚かだと思った。
 その愛は滅びに等しい。
 だとしても、貫きたい愛など自分には到底理解できないと思っていた。

 小春の瞳が大きく見開かれる。
 ふわりと風が吹く。
 頬がみるみる赤く染まり、まるで夕焼けを閉じ込めたように熱を帯びていく。

 「な、な⋯⋯なにそれ!」
 いつもの強気はどこへやら、視線を逸らしながら口ごもる。
 その様子を見て、翠人はわずかに笑った。

 だがその笑みの裏で、彼の耳はわずかな異変を捉えていた。
 屋根の上、影の奥。

 息を潜めていた妖たちが、ゆっくりと動き出している。
 雪女の血は大妖だけでなく、誰もが欲する極上の力だ。

 「惚けてる場合か、来るぞ、小春!」
 翠人の言葉に小春の髪が一瞬で銀髪に染まり、瞳が氷の蒼に変わる。

 それを見て、翠人は微笑み力を解放した。