禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 和臣は、何も言わずに雪乃の話を聞いた。
 雪乃が自分の辛い思い出を語ることなど今までなかったからだ。

 風が、そっと障子を揺らす。
 光が揺れ、影が静かに形を変える。

「それでも、誰よりも愛してくださる和臣様に出会えました。だから生きてて良かった」

 雪乃は和臣を見つめ、柔らかく、深く、微笑んだ。
 その言葉は、静かに、まっすぐに届く。

「雪乃⋯⋯っ」

 和臣の手がそっと雪乃の手に重なる。

 その温もりが、言葉の全てを受け止めていた。

 雪乃は視線を落とし小春の小さな手を、そっと包み込む。

 その指は、まだ弱く頼りない。

「大丈夫よ。小春もきっと出会えるわ。愛し、愛され、守り、守られる誰かに⋯⋯それが人か妖かは分からないけれど⋯⋯」

 優しく、語りかける声は風のように柔らかい。
 小春の指が、きゅっと雪乃の指を握る。

 一瞬、和臣を見て、二人の視線が重なった。
 人間同士、妖同士ならこの恋はもっと簡単だっただろう。

 人と妖の禁忌の恋は痛みを伴った。
 それでも溶けては積もる雪のように二人は気持ちを重ねていく。

 言葉にしなくとも、同じ想いがそこにあった。