禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃の静かな言葉は、部屋の空気をわずかに沈ませた。

 沈黙が落ちる。
 風の音だけが、障子の向こうでかすかに揺れていた。

 和臣は、すぐには言葉を返さなかった。
 ただ、ゆっくりと小春の顔を覗き込む。

 小さな寝息。
 無垢で、何も知らない存在。

 その頬に、初夏の光がやわらかく触れている。

「そうか、これだけ可愛いとやがて美しくなり男が放っておかず、一目惚れされて大変だろうな」

 自分が雪乃に心奪われた日を思い出しながら、和臣は静かに囁いた。
 人並み外れた美しい娘は人ではなかった。


 雪乃は唇を噛んだ。

「妖たちに狙われます。大妖にとって雪女の力は特別なものです」

 視線が、遠くへと向く。
 庭の緑の向こうへ。

 価値として見られ、奪われる対象として扱われる存在。


 雪乃の腕が、無意識に強くなる。
 小春を守るように抱きしめた。

「守らなければ⋯⋯この子は絶対に⋯⋯」

 その声は、かすかに震えていた。
 雪女の力を失った自分がどう妖に立ち向かえるのか分からない。
 不安でいっぱいになり心が沈み涙が溢れてくる。

 その時だった。
「雪乃」