禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

時は巡り、やわらかな初夏の光が庭を満たしていた。
 青葉は瑞々しく、陽を受けてきらきらと揺れている。

 風はどこまでも穏やかで、若い葉を撫でながら、さらさらと心地よい音を運んでくる。

 障子越しに差し込む陽は柔らかく、白い紙を透かして、淡い金色の光が室内に広がっていた。
 畳の上には、木漏れ日のような揺らぎが静かに落ちている。

 かつて黒い霧に覆われていた屋敷は、今では嘘のように静謐に包まれていた。
 淀んでいた気配は跡形もなく、ただ穏やかな時間だけがゆっくりと流れている。

 その中心にあるのは、先月誕生した小さな命だった。

「小春、眠りましたね」

 雪乃がそっと声を落とす。

 その声音は、かつての凍てついた響きではなく、深い安らぎを含んでいた。
 まるで壊れやすいものに触れるように、言葉一つさえ慎重に選ばれている。

 腕の中には、柔らかな産着に包まれた赤子。

 薄い布の下で、小さな胸がかすかに上下し、規則正しい寝息を立てている。
 まだ頼りなく、小さな手が夢の中で何かを掴もうとするかのようにふわりと空を泳いでいた。

 和臣はその様子を、隣で静かに見つめていた。