禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「不思議でございますね。今更、家族などとおっしゃられても、そのように扱われた覚えがありませんわ」
 声は穏やかだが、芯は冷たい。

 両親の顔が強張る。
 春の陽の下で、その表情だけが凍りついたように見えた。
「雪乃、そんな言い方はないだろ。お前は確かに私の娘だ。これからもそれは変わらない」

「申し訳ございません。私は愚かなもので、家族という名の元に貴方が接してきたやり方でしか返せませんわ」
(家では散々虐げられてきた、小笠原家に奉公に出したのも厄介払いでしょ)


 雪乃は丁寧に、頭を下げる。
 風が、着物の裾を揺らす。

 その言葉は、柔らかくも鋭く、深く突き刺さる。
 取り繕う余地すら、残さない。

 雪乃はそれ以上何も言わず、踵を返す。
 春の光の中を、静かに歩き和臣の元へと戻り、手をそっと取る。

 和臣はその手を強く握り返す。

「雪乃、愛する家族は俺と作っていこう」
「はい、和臣様」
 和臣は時を繰り返したことで、雪乃が白川家で酷い扱いを受けていたことを知った。
(もう、二度と苦しい思いはさせない。繰り返した時に意味を持たせるならば、雪乃の苦しみを知れたことだ)