禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 だが、その穏やかな時間に、水を差す影があった。
「雪乃!」
 聞き覚えのある声に振り返れば、そこに立っていたのは雪乃を冷たく扱ってきた両親。
 春の光の中で、その表情だけがどこかぎこちない。

 作られた笑みが、頬に不自然に張り付いている。
「元気そうで何よりだ」

「立派になって、本当に⋯⋯櫻子がいなくなった今、私たちの女は貴女だけよ」
 節子の言葉は優しいが、その奥にある打算は、薄い膜のように透けて見える。

 雪乃は静かにその姿を見つめた。
 表情は穏やかだが、その瞳には温度がなかった。

「ご用件は?」
 淡々とした声は春の空気とは裏腹にわずかに冷えた響きだった。
 両親は一瞬、言葉に詰まる。

 視線が揺れ、口元がわずかに歪む。

「いや、その⋯⋯せっかくの祝いだしな」
「家族として、今後の小笠原家との繋がりをこれから強固なものにした方が良いでしょ」


 両親の言葉に雪乃はわずかに首を傾げる。
 そして、ふっと微笑んだ。

 だがそれは、どこか距離を置いた静かな線引きのような笑みだった。