禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜


 美しく、傲慢な彼と急速に恋に落ちた。
 繰り返す時の中で、声を失い自信なさげならしくない彼を見た。

「私は和臣様のどんな表情もこれからも逃したくありません。生涯をかけて喜んで和臣様にお供させてください」

 今度は失わないように、確かめるように雪乃は和臣の手を握り返した。
 春の風が、二人を包んだ。

 冷たさの抜けたその風は、どこまでも優しかった。

 ♢♢♢

 それから、幾日か後。
 屋敷は、穏やかな光に満ちていた。

 崩れていた廊下は修繕され、木の香りが新しく漂っている。

 庭には柔らかな陽が降り注ぎ、桜の花びらが名残惜しげに地面を彩っていた。
 行われたのは、二人の婚儀だった。

 派手ではないが、静かな祝福に満ちた祝言。
 人々の笑顔と、穏やかな声。

 その全てが、ようやく辿り着いた結末を祝っていた。

「雪乃」
 式典の後、そっと呼ぶ。
 その声は、何度でも確かめるように、柔らかく響く。

 雪乃は振り返り、穏やかに微笑む。
「はい、和臣様」
 そのやり取りの、何気なさ。
 けれどそれが、どれほど尊いか二人はもう、知っている。