禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「終わりにいたしましょう」
 雪乃が、両手を重ねる。
 その仕草は祈りにも似ていたが、そこに宿るのは救済ではなく絶対的な停止。

 空気中の水分が、一斉に収束する。
 見えない糸に引かれるように、水の粒子が雪乃の周囲へと引き寄せられ、空間が白く霞んでいく。

 温度が急激に落ちる。
 肌を刺す冷気は、もはや痛みに近く、息を吸うたび肺の奥が凍りつくようだった。

 和臣の肌にも、その冷たさが突き刺さる。
 守られているはずの位置にいながら、その異常な力の片鱗を否応なく感じさせられる。

「凍てつき砕け散りなさい。お前の嫁になる程、私は安くないのよ」
 雪乃の静かな宣告。

 その一言が落ちた瞬間、世界が応えた。
 次の瞬間、白が爆ぜた。

 閃光のように広がった白が、視界を塗りつぶす。
 音すら置き去りにする速度で、冷気が一気に解き放たれた。

 鬼の全身が、一瞬で氷に閉ざされる。
 皮膚も、筋肉も、咆哮も全てが凍結され、動きの途中で完全に固定される。

 怒りに歪んだ表情すら、そのまま氷の中に封じ込められていた。
 完全な静止と音のない世界。