禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「遅過ぎです。空気も貴方の愚鈍さに退屈してますわ」
 雪乃のその一言と同時に、空気が、凍りついた。

 鬼の腕が、途中で止まる。
 振り下ろされるはずだったその一撃は、空中で縫い留められたかのように静止した。

 筋肉の塊のような巨腕が、見えない拘束に絡め取られ、ぎしり、と鈍く軋む音を立てる。骨がきしむようなその音は静まり返った空間に異様に響いた。
 見えない何かに絡め取られたように、その巨体が動きを失う。

 白い霧が絡みついていた。

 それは霧ではない。
 無数の氷の粒子ーー光を受けて微かに瞬く、細やかな結晶の群れ。ひとつひとつが空気中に漂いながら、確かな意思を持つかのように鬼の腕へとまとわりついていた。
 触れた箇所から、じわじわと白が侵食していく。

 皮膚が凍り、筋肉が固まり、動きそのものが奪われていく。

 雪乃が、静かに手をかざす。
 その所作はあまりにも穏やかで、戦いの最中とは思えないほどに優雅だった。

 白く細い指先が、月光を受けて淡く輝く。
「単純な動きを読むのは、容易でございます」

 凍てつく空気の中で、その声だけが澄んで響く。