禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 光を受けて、深い湖の底のように静かに輝くその色はもはや人のそれではなかった。
 人の温度を失った、透き通るような氷の色。

「和臣様、もう結構でございます」
 その声は、静かで、凍てつくように澄んでいた。

 響きは柔らかいのに、触れれば切れる氷の刃のような冷たさを帯びている。

 和臣の腕にそっと触れる。
 指先は冷えきっているはずなのに、不思議と痛みはなく、ただ確かな意思だけが伝わる。

 優しくも、確実に離させる力。
 和臣が息を呑む気配が伝わる。

 言葉にならない戸惑いが、その沈黙の重さに滲んでいた。
 雪乃はゆっくりと立ち上がった。

 その瞬間、空気が変わった。
 廊下に漂っていた埃がぴたりと静止する。

 音が遠のき、世界そのものが一拍遅れて動き出すかのような不自然な静寂が広がった。

 足元から白い霧が這い上がる。
 床板の隙間から滲み出るように現れたそれは、冷気を孕み触れたものからじわじわと熱を奪っていく。
 黒い瘴気を押し返すように、淡く輝く冷気が広がっていった。

 闇と白がせめぎ合い、やがて静かに、しかし確実に白が侵食していく。