禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

衝撃が、空気ごと引き裂いた。
 張り詰めていた屋敷の空気が、まるで布のように裂け、耳の奥を震わせる低い破裂音が廊下に響き渡る。
 古びた柱や梁が軋み、天井から細かな埃が舞い落ちた。

 鈍い音とともに、和臣の身体が大きく揺れる。
 踏みしめた床板がきしみ、衝撃の余波が足元から全身へと駆け上がった。

 雪乃の肩を抱く腕に、かすかな震えが走った。
 それは恐れではなく、耐えきるための力の揺らぎ。衣越しに伝わる体温が一瞬だけ不安定に揺れる。
「和臣様!」
 叫びは、粉塵にかすれて空気に溶けた。

 鬼の腕は、間一髪で和臣の背骨に届かなかった。
 感情のままに発せられた雪乃の冷気により、打撃がずれたのだ。
 背骨の代わりに攻撃を受けたのは柱だった。

 太く歪な腕が振り下ろされた瞬間、乾いた破砕音が鳴り響き白木の柱が無惨に裂ける。
 裂け目から吹き込んだ夜気が、冷たく肌を撫でた。

 木片が飛び散り、屋敷の中庭へと続く廊下が崩れ落ちる。
 砕けた木片が宙を舞い、月明かりを受けて鈍く光る。

 崩れた先には雪乃の冷気により雪をかぶった庭石と、凍りついた池がぼんやりと浮かび上がっていた。