禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃のは軽く手を叩き音を鳴らしてから、掌をかざす。

 白い霧の粒子が舞い上がり、鬼の視界と動きを一瞬で封じる。

 髪こそ黒いままだが、明らかに雪女の力を使う雪乃に和臣は息を呑む。
 雪乃の言葉遣いも喋り方も冷たさを感じ、普段の彼女とは明らかに違う。

 鬼は怒りで唸るものの、先を読む力がなく、雪乃の動きに翻弄される。
 雪乃は距離を保ちながら、鬼を誘導するように、慎重に後退。

 和臣はその側で、雪乃の仕草を目で追った。

「これで、少しはお分かりになりますでしょうか。力だけでは、私を手に入れることなど不可能でございます」

 雪乃の声には、ほんのわずかに嘲りが混じっていた。

 その瞬間、鬼の目がぎらりと赤黒く光り、表情が一変した。
 先ほどまでの単純な怒りとは違う、底の知れない憤怒。

「この雪女が!!」

 咆哮が屋敷の空気を震わせ、黒い霧が渦を巻いて空を撫でた。
 次の刹那、鬼は地を割らんばかりの勢いで踏み込み、赤い肌が黒い霧を押し分けて一直線に突進してくる。

「雪女?」

 その一言に、雪乃の思考が一瞬で凍りつく。

 胸の奥に冷たい衝撃が広がる。