禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 そして下手に覚醒してしまうと厄介な程、強い妖力を持つ雪女だ。

 妖狐は気絶し横たわる櫻子に視線を戻す。

 その黄金の瞳に一瞬の軽蔑が光る。
(こんな人の娘では大した栄養にならん)

「雪乃、お前の意思は尊重しよう。ただ、私はお前に惚れている。雪乃、結婚の返事はいつでも待っているぞ」
 その声は低く、甘美で、部屋の空気を震わせるようだった。

 雪乃は氷の微笑を浮かべたまま、声を発せず、心の中で固く意思を定める。
(妖狐の花嫁などにはならないわ。私には和臣様がいるもの)

 妖狐は低く唸ると、尾を翻し、静かに櫻子を抱き上げる。

「お待ちください、妖狐様。その女を渡す代わりに、この女性の病を治して欲しいのです」

 雪乃の瞳が、氷の蒼から鮮やかな青緑に変わる。
 妖と人の境界を行き来するような、不安定で揺れる光ーーそれは雪女としての潜在力と人としての思いが同居した色。
 妖狐はその瞳をじっと見つめ、軽く顔を顰める。

「分かった」
 妖狐は短く答えると、琴音の枕元にかすかに手をかざした。
 微かな光が雪乃の周囲を包む。