禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「雪乃は昔からそう。何をしても人目を引く。努力で勝ち取ったものが、貴女の“無自覚”一つでかき消されていくのよ。貴女には分からないでしょうね」
雪乃は胸の奥がすうっと冷えるのを感じた。

櫻子は足を組み、視線を雪乃に突き付けるように向け直す。
「今日の婚約式は、私が選ばれた家へ嫁ぐ大切な儀式なの」
声が一瞬だけ震えた。雪乃にはそれが、憤りというより焦りにも聞こえた。

「なのに、貴女は和臣様から目を離されていなかったわ」
「⋯⋯え?」
思わぬ言葉に、雪乃は反射的に目を見開いた。

「見ればわかるわ。和臣様の視線がどこに向けられていたかくらい」
櫻子は嫉妬を悟られまいとするように、再び微笑を作った。
その笑みは薄氷のようにきれいで、触れればひび割れそうだ。

「覚えておきなさい、雪乃。あなたが“その気がなくても”、周りは勝手に意味を見出すものよ。私の婚約に波風を立てるような真似を二度としないで」
雪乃は胸の奥に温かい痛みのようなものが広がるのを感じながら、小さく頷いた。

今日は想い人である和臣が姉と婚約してしまう日。
自分の立場を考えると、自分の力ではどうする事もできない。