禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 婚約式は順調に進み、客人たちの拍手や祝福の声が広間に響く。
 だが、櫻子の瞳の奥では、怒りと嫉妬が静かに、しかし確実に燃え上がっていた。
 雪乃の冷静さ、周囲の視線を集める無言の存在感。

 全てが、櫻子の優位性を脅かしていた。
(雪乃⋯⋯絶対に許さない。存在自体が許せない)

 式典の合間、櫻子は小笠原家の既知の女中、美織に小声で命じた。

「後で雪乃にちょっとした“失態”を起こしてもらうわ。絶対に目立たせて、恥をかかせて」
 微笑みの裏で、策略を巡らせる目は冷たく光る。

 その後、雪乃が膳を運ぶ場面。
 櫻子は巧妙に、膳の一部に油の塗られた布巾を差し向け、誰も気づかないように仕組ませる。

 その布巾を手に取った瞬間、雪乃の腕が滑り、膳がわずかに傾く。
 女中の美織が大袈裟なまでに「わー、雪乃さん大変!」と騒いだ。

 雪乃は即座にバランスを立て直し、何事もなかったかのように膳を整える。

 その瞬間、広間の視線が雪乃に向かい、客人たちが拍手する。

 雪乃は静かに膳を整え、軽く微笑み会釈すると何事もなかったかのように立ち去る。