禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 櫻子の人生にとって雪乃は邪魔者だったが、同時に絶対に不幸になって貰わなければ気が済まない相手だった。

 雪乃は放っておけば、どこぞの金持ちが拾って幸せにしそうな魅力がある。
 認めたくないが、明らかに目が離せなくなる、惑わされるような雪乃の存在。

「雪乃⋯⋯」
 櫻子の呼吸は荒くなり、頬にわずかに血が上る。
 周囲の視線に晒されている自分の立場を意識しつつも、雪乃が悔しがってないのが許せない。

 雪乃が膳を整えるたびに、櫻子の苛立ちは少しずつ増していく。

 それは嫉妬と焦燥、勝ち誇った自信が打ち砕かれる予感。
 櫻子の心に、初めての焦りを芽生えさせていた。

 その苛立ちは、笑顔の下に隠れた鋭い刃のようで、広間の華やかさの中に冷たい気配を忍び込ませる。
 雪乃はそれに気づかないように、ただ静かに膳を運び、淡々と任務をこなしている。

 櫻子の瞳がわずかに細められる。
 嫉妬と苛立ちが、華やかな衣装の下で確かに燃え上がっていた。
 雪乃の静かさに触れるたび、櫻子は自分の優位性が揺らぐ感覚を抑えきれず、胸の奥で小さく歯噛みをした。