禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 雪乃は口を開く、次に続く言葉を和臣は聞くのを恐れ逃げ出した。

♢♢♢

 翌朝、薄明の冷たさの中、雪乃は袖をたくし上げ静かに落ち葉を集めていた。
 女中の美織に頼まれた少しの庭仕事。けれど、なぜか人影はほかにない。

 美織から嫌がらせを受けるのはいつもの事だ。
そして、雪乃が何の文句も言わずに仕事を押し付けられるのも通常通り。

 風もなく、鳥の声もなく、ただ静寂だけが雪のように降り積もる。
 不可解な胸騒ぎが、ふっと雪乃の背をなでた。

 気配が、消えた。

 次の瞬間、闇がゆらりと揺れた。
 縁側の下から、桜の幹の裏から、何かが滲むように姿を現す。

 獣のような四肢、煙のような輪郭に九つの尾。
 しかし、顔だけは絶世の美男子のように誰もが見惚れるほど美しい。
 大妖の使い魔と呼ばれるそれは、月明かりを吸い込むように黒い闇から現れた。

「⋯⋯妖狐?」

 声が喉に張り付いた。
 妖(あやかし)など見たことがないのに、何故かその名を知っている気がする。
 雪乃は手にしていた熊手を落とし、後ずさる。しかし背後は土塀。逃げ道はない。

 影の化け物が、ゆらり、と首をかしげ次いで、音もなく跳んだ。

 その刹那。