禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 小笠原家の応接間は、祝言の準備で華やかに飾られていた。

 白いレースのカーテンが朝の光に揺れ、銀の燭台が淡く輝く。

 床の木目に映る光と影が、緊張した空気を余計に際立たせていた。

 婚約式は粛々と進み、式典の進行役の声だけが響く。

 櫻子は笑顔を浮かべ、周囲の人々は拍手と祝福の言葉を絶やさない。
 その喧騒の片隅で、雪乃は静かに配膳をしていた。

 運ぶ膳には温かい甘味や茶が並べられる。
 手つきは淡々としていて、声も出さず、ただ式を支えるための役割を果たすのみ。

 だがその青緑の瞳には、穏やかさと芯の強さが宿っている。
 和臣はその様子を、式典の席から苦々しい思いで見つめていた。

 言葉を失い、動くこともできず、ただ目の前で起こる出来事を受け止めるしかない。
 手を伸ばせば雪乃に触れられる距離にいるのに、口も身体も制約されて、何もできない。

(俺は何もできないのか?)

 胸の奥で、苛立ちと焦燥感がぐるぐると渦巻く。

 和臣は妖狐が自分に妖術を掛ける展開を予想できなかった訳ではない。