禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 心の中で名前を呼ぶと、胸の奥がそっと温まる。

 雪乃は自然に小走りになった。
 傘ひとつのために、この距離を歩く価値があると、身体が言っていた。

 士官学校の校舎の窓ガラスに、雪の結晶が微かに張り付く。
 和臣の姿は、正門をくぐった瞬間に見えた。

 雪の中、和臣は手を止め、少しだけ振り向く。
 雪乃を見た瞬間、和臣は泣きそうな顔をした。

 雪乃から傘を受け取った和臣は、彼女が雪が掛からないよう傘を刺す。
 和臣が濡れてしまいそうで、雪乃はそっと彼に寄り添った。

 そのまま二人は士官学校の近くにある小さな甘味処に入った。
 白い湯気が立ち上る店内は、雪の冷たさを忘れさせる温もりに満ちている。

 甘味処の湯気に包まれた席で、雪乃はまだお汁粉の温かさに手を包み込んでいた。
 和臣は雪乃の隣に座り、静かにこちらを見つめる。

 しかし、その瞳に言葉はなく、唇も閉ざされたまま。

「和臣様?」

 声をかけると、和臣は小さく頷く。

 それだけで、雪乃には十分すぎるほど伝わった。