禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

「どんな願いもですか? どうして私にそんな提案を?」
 甘い誘いに雪乃の胸が強く跳ねた。

 妖狐の瞳が細められ、口元に妖しい笑みが宿る。
 白い粒が妖狐の肩に積もるたび、じんわりと水のように消えていった。

 妖狐は一歩、雪乃に近づく。
「お前が私の花嫁になるのならば、何でも聞いてやるよ」

 耳元で囁いたように近い声。
 なのに、妖狐の姿は一歩も動いていない。

 雪乃は自分でも知らぬうちに震えていた。
 冷気のせいか、それとも妖狐の放つ妖艶な気配のせいか分からない。

 妖狐の瞳が細められ、金の光が揺れた。
 微笑む口元は美しく整いすぎていて、かえって恐ろしい。

 ただ雪だけが、彼の言葉に震えるように落ち続けている。
 雪乃は涙がにじむほどに目を見開いた。

「いや、嫌です!」
「ほう」

 妖狐の尾がゆっくりと持ち上がり、九つの尾の一本が雪乃の頬に触れようと近づく。

 指先でも風でもない、不気味な“意志”を宿した質感。
 触れられる前から、頬が粟立つほどの圧を感じた。

「本当に?」
 妖狐の問いは優しく、しかし逃がさぬ罠のように静かだった。

 雪乃の呼吸が止まる。